六郷のカマクラ(国指定重要無形民俗文化財)

六郷のカマクラ行事は2月中旬から5日間にわたって行われる、豊作、安全繁栄を祈る「年ごい」と凶作や不幸を除去する「悪魔祓い」、そしてその年の吉凶を占う「年占い」の三者が一体となった行事です。

最終日をピークとする行事で、初日の蔵開きと天筆書初め、2日目の天筆掲揚、鳥追い小屋造り、5日目の餅つき、天筆焼き(ドンド焼き)、竹うち、そして鳥追い、この一連の行事を「六郷のカマクラ」といい、この形が定着したのは江戸初期ごろといわれています。

蔵開き(鏡開き)

蔵開きは、六郷のカマクラ行事の初日に行われる。地主では、元旦からこの日まで蔵の米出しを行わず、この日から米出しを始める。蔵の前に据え膳をしてお灯明をともし、把手のある大きな鍵を供えて拝む。商家では生紙(きがみ)を横二つ折りにして厚さ5~6cm位、表紙をつけて麻糸で綴った新しい帳面に墨痕あざやかに大福帳、当座帳と書き、土蔵を開き、大福帳を供え一年の繁盛を祈念するのがしきたりである。

天筆

天筆は、緑、黄、赤、白、青の順に色紙を継ぎ合わせてこしらえる。天筆に書く文句はいろいろの例があるが、はじめには必ず“奉納 鎌倉大明神 天筆和合楽 地福円満楽”と書き、最後には和歌一首“新玉の年の始めに筆とりて万の宝かくぞあつむる”を書くのが習わしとなっている。

鳥追い行事

2日目頃から鳥追い小屋造りが始まり、その中に“鎌倉大明神”が祀られ、子どもたちは互いに訪問しあい、鳥追い歌を唄って過ごす。鳥追い小屋と呼ばれる雪室は、天井に茅を編んで作った簀(す)か筵(むしろ)を載せ、一晩中炭火をたいても中毒にならないよう先人の知恵が生かされている。

 

竹うち(1回戦と2回戦)

竹うちは旧羽州街道を境に南軍、北軍の二手に分けての竹打ち合戦である。最終日夜には各町内本部で必勝祈願出陣式を終えた男衆が、木貝の「ボヘー ボヘー」という音とともに青竹の長い束をかついで、秋田諏訪宮前の「カマクラ畑」を目指す。午後8時両軍対峙の沈黙が破れると、バリ、バリという竹の打ち合う音、割れる音ととともに男衆の威勢のいい掛け声と怒号が響きわたる。

天筆焼き

各家庭から集められた正月のしめ飾りや神符、門松などをカマクラ畑の中央にまとめ、藁を入れて松鳰(まつにお)を作る。竹うち2回戦の後、神官が鎌倉大明神を勧請した松鳰のお祓いをし、これに点火して、それぞれの願いが書かれた天筆を焼き、無病息災、家内安全を祈願する。

竹うち(3回戦)

松鳰の炎が勢いよく空に舞い上がり、奮戦する竹の勇士を映し出しながら、第3回目の決戦が行われる。この竹うちで北軍が勝てば豊作、南軍が勝てば米の値があがるといい伝えられている。最後の戦いを終え、今まで打ち合いした勇士たちは、握手しながら松鳰の周りに集まり、“今年も豊作であるように”と念じ、一連の行事を締めくくる。